売れる時期と売れない時期がある!? 小さなアパレルブランドの秋冬お仕事カレンダー

アパレルブランドの年間販売スケジュールは少し独特です。

夏になると冬モノが店頭に置かれ、冬になると夏モノが置かれる…。およそ半年程のズレを作るのがアパレル業界の暗黙ルールです。

ところが、こういった販売のタイミングを知っているからこそ、ブランドの立ち上げ初期には気をつけていただきたいことがあります。

特にハンドメイドからスタートさせる小規模アパレルブランドでの起業であればなおさらです。

今日はMauve pink の実体験から、秋冬のお仕事カレンダーを参考にしながら年間でのお仕事の組み方、過ごし方をお伝えします。

Mauve pink 秋冬シーズンのお仕事スタイル

大手アパレルブランドを参考にしてシーズン始めから大きく売り出す方法を小規模事業者がマネすると、正直ケガをします。

潤沢な資金を用意し、早い段階からサンプルを作り、撮影や販促物の準備も終え、生地の確保と量産体制までを整える必要があるからです。

Mauve pink では今でこそ300着ほどの在庫を管理していますが、それでも半年先を見越して動くにはまだまだ早いと思っています。

ハンドメイドでスタートした立ち上げ当初であればなおさらです。目の前の1ヶ月分に必要な量の在庫があれば十分でしょう。

また、私たちが取り扱う生地はリネンが中心のため、秋冬はどうしても売れ行きが落ち着いてしまいます。

ですが、だからこそ戦略的に年間スケジュールを立てることが、売上を右肩あがりに伸ばしていくために必要不可欠となります。

9月と10月は在庫調整をしながら販売

残暑の時期はまだまだ半袖の商品も売れているため、夏モノの販売は継続させていきます。とはいえ、3月~8月ほどの勢いではないため在庫のバランスは調整します。

特にハンドメイドで、Creema(クリーマ)やminne(ミンネ)を使って販売するのであれば、あまりシーズンの先取りをしすぎても売れない印象を私たちは持っています。

今なにが売れているかに意識を向けながら、次の季節に向けて準備をします。

 

11月と12月は構想とサンプル作り

リネンに対する一般的なイメージはどうしても「春夏の素材」になるため、私たちは11月に翌年の春夏モノの企画と構想を立て、12月にはサンプル作りに入るようにしています。

実際にハンドメイドの販売サイトを見てみるとわかりますが、コートやダウン、ニットなどを扱う個人の作家さんはそんなに多くありません。

生地は大きく分けると「ニット(編み物)」と「布帛(織り物)※ふはくと読む」の2つなのですが、ハンドメイドでは布帛を扱うことが大半です。特別なミシンが必要になるからです。

Mauve pink でも布帛、特にリネンを中心に扱っているため、冬の季節商品自体はそれほど持っていません。だからこそ、11月と12月は戦略的にプロモーション活動の頻度を落とします。

売れる時期にもっと売るための戦略

少し厚めの生地であれば、Mauve pink の場合は1月からさっそく春モノの注文が増えてきます。

そして少なくとも、3月からはどんどん売れ行きも伸び始め、8月の終わり頃まで目が回るほどの忙しさを体験することになります。

そういう意味では、11月と12月はお仕事を続ける上での唯一のバケーション期間でもあるのでしっかり休んでプライベートも充実させます。ここで英気を養うからこそ春夏の時期を頑張れます。

その一方、春夏の売上をさらに伸ばしていくための下地を作るのもこの11月と12になります。

あくまで11月・12月は「販売」や「プロモーション」が落ち着くだけであり、反対に「商品企画」や「事業構想」などはこの時期にしっかりと行います。資金の使い方も綿密に練ります。

 

売上予測をどこまで立てられるか?

Mauve pink は、春夏に一気に商品を売り、秋冬は売上を落ち着かせます。リネンを扱っているため、必然的にそうなったともいえます。

そのためここまで書いたような事業計画を立てるのですが、本当であれば毎月コンスタントに売れるほうが経営的にも精神的にも安定します。しかし、私たちのやり方が不安定というわけでもありません。

大切なことは、売上予測をどこまで立てられるか、です。

春夏に一気に売るためには、その時期までに適切な在庫量を持つことが重要になります。

そして当然、売上計画の数字が高ければ高いほど、在庫の量も増えます。

別の見方をすれば、資金(キャッシュ)を先に投資し、後から回収する方式です。ある程度の余裕がなければお金が途中で尽きてしまいます。

つまり、月の利益がまだ十数万円の起業初期は、私たちのような季節で売上が大きく変動するやり方は経営が不安定になります。

もしリネンのように季節性のある生地を扱う場合はそのあたりもよく考える必要があると思います。

売る力と定番商品で体力をつける

ここまでの復習ですが、あくまでMauve pink の基本的な年間カレンダーは、春夏に勢いよく販売して、秋冬にその準備をするというスタイルです。

それを実行するためには、ある程度の在庫を持つことができる資金余力と、その年にどれぐらいの売上見込みがあるかという精度の高い販売計画があります。

とはいえ、ハンドメイド起業やアパレルブランドの立ち上げ初期は、お金の余裕もなければ販売計画も立てにくいと思います。

だからこそ私が提案したいのは「売る力」と「定番商品の力」を身につけるということです。

 

「売る力」には、基本的なマーケティングの理解や営業の本質がありますし、SNSの使い方から、Creema(クリーマ)やminne(ミンネ)を使いこなして売上を最大化させる多少のノウハウも必要です。

同時に、「定番商品」が持つ土台の強さも忘れるわけにはいきません。

1年を通して売れる長袖のシャツも良いですし、流行り廃りのない、トレンドやシーズンに依存しないロングセラーを狙う商品もリスクを減らします。

Mauve pink では秋冬に積極的なプロモーションはしないと書きましたが、それでも定番商品などは継続的に売れ続けています。

こうした土台を、ひとりのハンドメイド作家として地道に積み上げた時期があるからこそ今があります。基礎がしっかりしていれば、売れる時期と売れない時期があることそのものは怖いことではない。

それを知ることが、まず最初の大事な一歩になると思います。

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